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お知らせ 2019.10.11

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同朋高等学校

「人ごとでない」 過労自殺 問う 同朋高放送部 3年間かけ映像化

映像を制作した放送部の生徒ら=中村区の同朋高で

映像を制作した放送部の生徒ら=中村区の同朋高で

 同朋高校放送部(中村区)がドキュメンタリー映像「過労自殺」を制作した。職場でのパワハラで自殺した市内の20代女性の遺族や専門家らを取材した生徒たち。過労自殺を「人ごとではない」と自らの問題と捉え、社会の在り方を問い掛ける作品に仕上がった。(武藤周吉)

 放送部が取材したのは市内の女性=当時(21)=の過労自殺。先輩社員から激しい叱責を受けてうつ病を発症し、2012年6月に自ら命を絶った。遺族は会社と先輩社員を相手取って損害賠償を求めて提訴。17年11月の名古屋高裁判決でパワハラと自殺との因果関係が認められ、昨年11月に最高裁で確定した。

 取材は、部内の勉強会で16年10月に過労死を学んだことがきっかけ。昨年9月には音声版の作品を完成させた。その後、後輩たちが引き継いで編集作業を担い、映像版を仕上げた。

 ドキュメンタリー映像は約10分。亡くなった女性の母親から証言を聞き取ったり、遺族側の代理人弁護士や医師からも話を聞いたりして、女性が追い詰められていった心理状態を明らかにした。

 また、女性が入社した09年がリーマン・ショック直後の就職難の時期だった点にも注目。同時期に社会人になった高校の先輩にも取材し、「やっと就職ができた後に転職は考えられなかったのではないか」と社会状況にも目を向けた。同じ高校生にもマイクを向けて意見を聞き取った。

 制作当初から取材に関わった卒業生で大学1年の織田隆睦(たかのぶ)さん(19)は「過労死や過労自殺をニュースで聞いても自分と関係あるとは思えないが、取材で決して人ごとではないと感じた。僕らもいずれ社会人になる。労働法などを学び、自分の身を守る術を知る必要がある」と考えを深めた。

 映像の制作を引き継いだ高校3年の生徒(18)も「遺族の思いや過労自殺の事実を多くの人に知ってほしい」と呼び掛ける。

 ドキュメンタリー映像は過労死を防ぐために活動している団体などに送り、活用してもらう。

(2019年10月11日 中日新聞朝刊市民版より)
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