旧満州（中国東北部）から引き揚げた松下哲子さん（９０）＝千種区＝の戦争体験談を聞く講演会が１４日、同区の椙山女学園中学・高校であり、松下さんは「戦後８０年間の平和がどれほど貴重なことか知ってほしい」と生徒に訴えた。（都沙羅）

　同校は第２次世界大戦から８０年目を迎える今年、授業や修学旅行を通して平和を学ぶプロジェクトを開始。第１弾として、同校の国語教員を勤めた経験のある松下さんを招いた。

　父親が南満州鉄道で勤務していた松下さんは、疎開先の平壌市で終戦を迎え、戦後すぐ奉天（現在の瀋陽）市に戻った。町は大柄なソ連兵であふれ恐怖を覚えたことや、命からがら引き揚げた末に疫病や飢えで亡くなる満蒙（まんもう）開拓団員を目の当たりにしたことを振り返った。

　松下さんは戦争を始めた当時の政府を批判し「なぜ市民が死なねばならなかったのか」と疑問を投げ、「今日と同じ日常があしたも続くのはありがたいこと。平和は皆さんが守らないとなくなってしまう」と呼びかけた。

　この日は高校２年の３３５人が講演を聞いた。生徒は「守られてきた８０年の平和をつないでいかなきゃと思った」と話した。２７日は中学３年の２１２人も松下さんの話に耳を傾ける。

（2025年5月15日　中日新聞朝刊市民版より）

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