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お知らせ 2024.03.03

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東邦高等学校

戦争伝える 種まき実る 東邦高生主導 なごや平和の日

(左)「平和の日制定はゴールじゃない」と話す礒部翔馬さん=名古屋市で (右)高校時代に活動を本格化させた道端明日美さん=大阪市で

(左)「平和の日制定はゴールじゃない」と話す礒部翔馬さん=名古屋市で (右)高校時代に活動を本格化させた道端明日美さん=大阪市で

■10年前から要望 条例制定控えOB喜び

 名古屋空襲の犠牲者を悼み、太平洋戦争の記憶を受け継ぐため、名古屋市に「なごや平和の日」が間もなく誕生する。制定の発端をつくったのは、10年前から要望活動をしてきた東邦高校(同市名東区)の生徒たちだ。節目の日に選ばれたのは、名古屋城が焼失した5月14日。後輩にバトンをつないだOBは「若者たちが主体的に戦争の歴史を伝える日になってほしい」と願う。(高田みのり、写真も)

 「時間はかかっても実現できた。高校生でも社会を動かせるんだなって」。現在、立命館大の4年となった道端明日美さん(22)が振り返った。東邦高1年だった2017年、制定に向けた取り組みを本格化させた中心メンバーだ。

 同高は前身の東邦商業学校時代、勤労動員中の生徒や教員22人を名古屋空襲で亡くした。道端さん入学前の14年、当時の生徒会が「名古屋空襲慰霊の日」の制定を求め、市に要望書を提出した経緯がある。

 数年間眠っていた活動を再開させるため、仲間に誘ったのが広島県出身の同級生、礒部翔馬さん(22)=人間環境大4年=だった。曽祖父母から原爆の話を聞いて育った礒部さんは、「戦争を含めた歴史をこれでもかと学ぶ広島に比べ、名古屋空襲は『資料集で見たな』と思う程度。若者が学ぶきっかけをつくりたいと思った」と話す。

 他の仲間と一緒に、空襲を経験した東邦商業学校の大先輩から体験談を聞くことも。「防空壕(ごう)の外に遺体が転がるなど当時の悲惨な状況だけでなく、自分たちと同じ世代の若者が亡くなったことに衝撃を受けた」(道端さん)

 こうした学びを生かした請願書を18年に市に提出し、翌19年に市議会で意見陳述をすると、議員からは賛同の声が相次いだ。ただ名古屋空襲は60回を超え、特定の日を指定しづらいなどの理由で制定は保留となり、その後に廃案となっていた。

 だが道端さんらの卒業後、後輩たちの活動が花を開くことになる。23年1月に同高の生徒会が請願書を提出すると、発足した市の有識者会議が、毎年5月14日を「平和の日」とする意見を市へ提案。今月の市議会で条例案が可決される見通しとなった。

 2人の卒業から4年が経過し、今年春にともに社会人となる。「ここまで長かった」(礒部さん)と感じ、「まいた種は無駄じゃなかった」(道端さん)との喜びもあふれる。市は当日、追悼イベントなどを検討している。ただ2人は「平和の日をきっかけに戦争に触れ、どう語り継ぐか。この日が形骸化しないように、行政や大人任せにせず、私たち若者たちも活動するか、それぞれで平和を考えていかないと」と考えている。

(2024年3月3日 中日新聞朝刊1面より)

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