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2012.09.24
タンパク質の「くぼみ」発見 HIV増殖抑制へ一歩
■名古屋医療センターなど 新薬開発に期待
エイズウイルス(HIV)がヒトの細胞内の免疫力を奪う過程に関係するタンパク質の部位を突き止めたと、国立名古屋医療センター感染症研究室の岩谷靖雅室長や名古屋大大学院工学研究科の大学院生北村紳悟さんらの研究チームが発表した。将来的にエイズの新薬開発につながる可能性がある。23日、米科学誌ネイチャー・ストラクチュラル&モレキュラー・バイオロジー電子版に掲載した。
ヒトは通常、リンパ球の細胞内にタンパク質「APOBEC(アポベック)3」があり、ウイルス増殖を抑えて体を守る役割を果たしている。しかし、HIVが作り出す特殊なタンパク質「Vif」と結合すると分解し、免疫力を失うことが知られていた。
岩谷室長らは、遺伝子操作で作ったアポベック3にエックス線を照射し、構造を分析。Vifが結合する「くぼみ」の形を発見した。このくぼみに当てはまる化合物が分かれば、Vifの結合を防ぎ、アポベック3本来の力でHIVの増殖を抑制する可能性がある。
研究チームは今後、くぼみに当てはまる化合物をコンピューターで探し、効果を検証しながらマウスなどの動物実験につなげる。
HIVは国内で年間1000人が感染し、患者は約10万人。健康な細胞に影響を与えずHIVだけを狙った分子標的薬の開発が進み、今では服用していればほぼ発症しないといわれている。しかし、ウイルス自体は変化しやすく、耐性を持つと薬が効かなくなる可能性もある。長期間の服用による副作用も不明な部分が多い。
岩谷室長は「くぼみを発見できたことで、もともと人間が持つ免疫力で、HIVに耐えることができるかもしれない」と期待を込めた。
(2012年9月24日 中日新聞朝刊3面より)
エイズウイルス(HIV)がヒトの細胞内の免疫力を奪う過程に関係するタンパク質の部位を突き止めたと、国立名古屋医療センター感染症研究室の岩谷靖雅室長や名古屋大大学院工学研究科の大学院生北村紳悟さんらの研究チームが発表した。将来的にエイズの新薬開発につながる可能性がある。23日、米科学誌ネイチャー・ストラクチュラル&モレキュラー・バイオロジー電子版に掲載した。
ヒトは通常、リンパ球の細胞内にタンパク質「APOBEC(アポベック)3」があり、ウイルス増殖を抑えて体を守る役割を果たしている。しかし、HIVが作り出す特殊なタンパク質「Vif」と結合すると分解し、免疫力を失うことが知られていた。
岩谷室長らは、遺伝子操作で作ったアポベック3にエックス線を照射し、構造を分析。Vifが結合する「くぼみ」の形を発見した。このくぼみに当てはまる化合物が分かれば、Vifの結合を防ぎ、アポベック3本来の力でHIVの増殖を抑制する可能性がある。
研究チームは今後、くぼみに当てはまる化合物をコンピューターで探し、効果を検証しながらマウスなどの動物実験につなげる。
HIVは国内で年間1000人が感染し、患者は約10万人。健康な細胞に影響を与えずHIVだけを狙った分子標的薬の開発が進み、今では服用していればほぼ発症しないといわれている。しかし、ウイルス自体は変化しやすく、耐性を持つと薬が効かなくなる可能性もある。長期間の服用による副作用も不明な部分が多い。
岩谷室長は「くぼみを発見できたことで、もともと人間が持つ免疫力で、HIVに耐えることができるかもしれない」と期待を込めた。
(2012年9月24日 中日新聞朝刊3面より)