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高校野球 2021.07.06

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徳風高等学校

憧れダイヤモンド 女子主将は輝いた 亀山・徳風高校 地方大会はスタンドで応援へ

(上)練習試合で安打を放つ境田主将

(上)練習試合で安打を放つ境田主将

■硬式野球部創設 初の練習試合

 三重県亀山市の徳風高校が、10日に開幕する夏の全国高校野球選手権大会三重大会に初出場する。2020年春の野球部創設以来、チームを支えてきたのは3年生の女子部員で主将の境田さん(18)。女子選手の出場を認めない日本高野連の規定で大会でのプレーはかなわないが、スタンドからチームメートの活躍を見守る。 (鎌倉優太)

 6月25日、同県伊賀市で、同校野球部にとって初めての練習試合があった。境田さんは4番、ファーストで出場。格上の桜丘高校(同市)を相手に、境田さんは人一倍、声を張り上げて仲間を鼓舞し、打席では右前打を放つ活躍を見せた。チームは大敗したが「試合ができただけでもうれしかった」と汗をぬぐった。

 徳風高校は、現監督の神谷卓敬(たかひろ)教諭(32)が19年春に赴任したのを機に軟式野球部を創部した。野球好きの親戚の影響で小学、中学時代はソフトボールに汗を流した境田さん。入部当初は10人ほどが集まったが、秋ごろまでに徐々に退部が相次ぎ、境田さんと男子部員の乙部さん(17)、マネジャーの我妻さん(18)の3人が残った。

 「いっそ、より本格的な硬式野球部として再出発してみては」。その冬、神谷教諭が提案し、3人も賛同。硬式野球部になれば、女子部員の境田さんは高野連の規定で公式戦に出場できなくなるが、「意欲的な部員が集まるかもしれないし、練習試合だったら私も出場できる」と前を向いた。

 雑草だらけだったグラウンドを整地し、防護ネットを張って環境を整えることから始めた。キャッチボールや素振りに励むうち、今春までに女子1人、男子9人が加わり、計13人に。チームの形が整った。

 とはいえ、選手の大半は野球未経験者で、練習では初歩的なミスも目立つ。それでも境田さんは、白球と掛け声が飛び交うグラウンドに「信じられない光景」と笑顔を見せる。

 コロナ禍や悪天候でなかなか試合が組めず、6月の練習試合が境田さんにとって、最初で最後の晴れ舞台となった。「まともに野球ができたのは短い間だったけれど、楽しかった。夏はスタンドから一生懸命、応援したい」。グラウンドの土は踏めなくても、チームの思いは1つだ。

■「女子部」全国で発足の動き

 日本高野連は、主催大会への参加者資格規定を「在学する男子生徒」とし、女子の出場を認めていない。その理由を、三重県高校野球連盟の担当者は「体力差による危険の防止が考えられる」と説明する。

 一方、全国で女子部をつくる動きが広がっている。1998年に発足した全国高校女子硬式野球連盟によると、加盟校、登録選手は年々増えており、6月末現在で全国43校、1320人が登録する。東海三県では至学館(愛知)や啓明学館(同)、岐阜第一(岐阜)があるが、三重県にはない。

 同連盟主催の夏の全国大会には、地元に女子部がない生徒でつくる連合チームも出場するが、男子部に所属している場合は出場できない。同連盟によると、日本学生野球憲章で日本高野連加盟校の部員は、他の野球団体への登録が認められないためという。

 昨年2月には、同連盟と日本高野連などによる意見交換会が初めて開かれ、男子部所属の女子選手の活動方法について話し合われたが、大会への参加の可否について結論は出ていない。

(2021年7月6日 中日新聞夕刊9面より)

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