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お知らせ 2020.12.19

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桜丘高等学校

祖父母語る 「戦争めし」 豊橋・桜丘高生徒が調査 青年誌連載漫画で紹介

取材を終えて魚乃目さん(前列右から5人目)を囲み、記念撮影する桜丘高の生徒=愛知県豊橋市の桜丘高で

取材を終えて魚乃目さん(前列右から5人目)を囲み、記念撮影する桜丘高の生徒=愛知県豊橋市の桜丘高で

 戦後75年にあたる今年、愛知県豊橋市の桜丘高校の全校生徒約1800人が、祖父母らが戦時中に口にした食事について調査した。薄れゆく戦争の記憶を「食」の切り口で受け継ぐプロジェクト。生徒たちの姿は、漫画家魚乃目三太さん(45)が「ヤングチャンピオン烈」で連載中の「戦争めし」で取り上げられることになった。 (酒井博章)

 桜丘高は広島の原爆の残り火をともす全国で唯一の学校で、平和教育に力を入れている。今年は2~3年生の有志10人が、戦時中の食事に焦点をあてて体験をまとめようと計画。全校生徒に祖父母らへの聞き取りを依頼して今夏から調査し、特徴的な24のエピソードを小冊子に収めた。

 ある生徒は80歳の祖母から、幼いころに毎日口にしていた「米がほとんどないサツマイモご飯」の話を聞いた。水の中に入っている米は、探し出さなければならないほどわずか。小さく切ったサツマイモを加え、おじやのようにして食べていた。「家族は10人。1人が食べられる量は、ほんの少しだった」という。

 焼け野原に生えた雑草を食べて生き延びた、という体験談なども寄せられた。

 生徒らとプロジェクトに関わった小林寿来教諭(40)は「生きる上で切り離せないのが食事。戦争を知らない私たちにも悲惨さ、平和の尊さが伝わる」と語る。

 今回、生徒らが触発されプロジェクトに取り組むきっかけとなったのが、魚乃目さんの連載「戦争めし」だ。太平洋戦争当時の記録や体験者への取材を基に、食事にまつわる人間ドラマを描いている。小林教諭が、豊橋版の戦争めしを漫画で紹介してもらえないかと手紙を送ったところ、魚乃目さんから快諾を得た。

 魚乃目さんは11月下旬に同校を訪れ、生徒らに取材。小冊子に目を通しながら「例えば、雑草を食べたと書いているが、戦時中の食事を知る上では重要なことですね」などと語った。

 リーダーを務めた3年の男子生徒(18)は「改めて、今の生活がどれだけ幸せなことか分かった。漫画になって多くの人の目に触れることで、平和な世の中をつないでいくきっかけになってほしい」と願う。

 魚乃目さんは本紙の取材に「まさに現代の『戦争めし』の物語だ。戦中の記憶を残していくために、桜丘高の取り組みが広まってほしい」と話す。桜丘高の活動は今月15日発売のヤングチャンピオン烈で掲載された魚乃目さんの「戦争めし」で紹介された。今後も取り上げる予定という。

 うおのめ・さんた 本名・小鯛光彦。1975年、奈良県生まれ。大阪工業大を卒業し、2007年に漫画家としてデビュー。「戦争めし」(秋田書店)は15年に始まり、現在、月刊のヤングチャンピオン烈で連載している。他の作品に「ちらん-特攻兵の幸福食堂」(同)、「しあわせゴハン」(集英社)、「宮沢賢治の食卓」(少年画報社)など。

(2020年12月19日 中日新聞夕刊7面より)

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