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高校野球 2020.06.06

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愛知工業大学名電高等学校

愛工大名電 夏の引退撤廃 3年生 秋冬も 鍛錬続けプロ、大学へ

2018年の夏の甲子園、3回戦で敗れた愛工大名電。これまでは夏の終わりが「現役」の区切りだった

2018年の夏の甲子園、3回戦で敗れた愛工大名電。これまでは夏の終わりが「現役」の区切りだった

 春夏の甲子園に計21度出場し、春の優勝、準優勝1度ずつを誇る愛工大名電(名古屋市)は本年度から、夏の大会を終えた3年生の引退を「撤廃」する。秋も集団での練習、試合を続けることでプロや大学、社会人で即戦力となってもらう狙いで、全国選手権や地方大会後の引退が当たり前だった高校野球に一石を投じる試み。偶然にも新型コロナウイルスの感染拡大で今夏の甲子園が中止となったが、3年生は前向きに汗を流している。(永井響太)

 今年の3年生16人は全員、大学で野球を続ける予定。この夏も2年生以下の新チームと時間をずらしながら自校グラウンドなどで練習し、9~11月には他校などと木製バットで試合をする。倉野光生監督は新チームの指揮に重点を置くため、OBの元プロらに指導の協力を依頼する。

 取り組みの名は、米のカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)にちなみ「UCLB(University Company Learning Baseball)」。大学、企業などに向かう選手に野球のさらなる学びを促す意味を込めた。甲子園だけを目標にして燃え尽きることなく、高校生活を目いっぱい使って選手を育てる体制を整え、東海地方の大学野球の活性化や有望な中学生の県外流出も防ぎたい考えだ。

 高校球児は通常、遅くても3年時の8月に引退。その後、野球を続ける選手は下級生の練習に交ぜてもらうか個人トレーニングが中心となる。倉野監督は「サッカーやラグビーは、脂の乗り切った高校最後の秋以降に試合をしてプロや大学へ進む。野球は一番いいところで引退してしまう」と疑問を感じていた。十分に鍛えられないまま進んだ大学などで急に練習の強度が上がり、けがで存分に活躍できない教え子が増えてきたため、活動の形を見直そうと考えたという。

 OBで米大リーグ・マリナーズの球団会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチローさんが「いい見本」(倉野監督)という。イチローさんは3年夏に引退後、オリックスの入寮まで休まず下級生の練習に参加。海を渡っても活躍できたのは、この時期に鍛錬を続けたからこそ。倉野監督は「(従来の)引退から3~4カ月をいかに過ごすかが大事」と意義を語る。

 新型コロナで大舞台が奪われるだけでなく、5月までは部活動も自粛を余儀なくされた。愛知大会に替わる試合も催される見通しだが、名電の3年生にとってはその先も貴重な時間となる。佐藤慶志朗副主将は「3年生は引退すると今まで通り練習できなかった。秋と冬も見てもらえるのはありがたい」。高校野球生活の「延長戦」が、球児の将来に希望をもたらす。

(2020年6月6日 中日新聞朝刊18面より)

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