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お知らせ 2025.09.20

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特攻の記憶 僕らが演じ後世へ 南山高・中の演劇同好会 20、21日上演

本番を控え、特攻隊員を題材にした劇の練習に励む生徒ら=昭和区の南山高校・中学校男子部で

本番を控え、特攻隊員を題材にした劇の練習に励む生徒ら=昭和区の南山高校・中学校男子部で

 戦争の記憶をつないでいこうと、昭和区の南山高校・中学校男子部の演劇同好会が20、21日、実在した特攻隊員らを題材にした劇を学校の文化祭で上演する。太平洋戦争中に学徒出陣し、航空機に乗って体当たりしたのは、演じる生徒たちと同年代の若者。台本には隊員らが残した言葉を織り交ぜ、込められた思いを想像しながら演じる。(水谷元海)

 「どうか故郷の父母にぼくは立派に死んだとお伝えください」。舞台上で敬礼した隊員役の生徒が、そう言い残して袖に姿を消すと、爆発音が響いた。直後にナレーションが告げる。「海へ落ちて死んだ。物資の不足による飛行機の整備不良」

 17日に校内であった通し稽古の一幕。物語は、従軍した曽祖父の手記をひ孫たちが読む場面から始まる。手記が伝えるのは、特攻で散っていった仲間たちの姿。場面は戦時中に移り、彼らの最期が描かれていく。

 台本は外部顧問の大衆演劇「御陵(みささぎ)一座」(瀬戸市)の団員白山葵さん(39)が、ともに通信兵だった祖父と知人の父から聞いた話などを基に書き下ろした。戦時中、祖父は20代半ば。知人の父は10代後半で、特攻機からのモールス信号を受けていたという。

 「ちょっと臆病で、生き残りたい。けど生き残った後悔から経験を伝えようとした」。中学1年の生徒(13)が演じる、手記を残した曽祖父の人物像だ。「環境も受けた教育も違う。同じ気持ちには至れないが、演じるうちに少しずつ近づけている」と演じる生徒。特攻の歴史も調べ、想像力を働かせる。

 白山さんは「戦争を知らない子たちが、体験者の言葉で戦争を伝えることに意義がある」と話す。劇中の特攻兵役のセリフや境遇は実話に基づき、ひ孫役らのセリフには台本の原案を見た生徒の感想を反映した。20分の短い劇だが、ノンフィクションにこだわった。

 高校1年の部長(15)は「行けと言われても自分は特攻に行けない。繰り返さないため、体験者がいなくなっても伝え続けないと。幅広い世代に見てほしい」と話した。

 同好会には中学1年から高校1年の10人が在籍し、照明や音響も担う。会場は校内の講堂で、20日は午後2時半、21日は午前10時に開演。両日とも文化祭で、誰でも入場できる。無料。

(2025年9月20日 中日新聞朝刊市民版より)
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