みんなで考える大学特集 2019年度 入試の展望と対策 中部の著名私大・短大にアンケート

「大学入学共通テスト」導入へ “学力の3要素”問う傾向顕著に
「高大接続改革」を意識した動き センター試験の問題にも変化が
学校法人 河合塾 教育コンテンツ本部 教育情報部 部長 富沢弘和氏

学校法人 河合塾 教育コンテンツ本部
教育情報部 部長 富沢弘和氏

 国際化や情報化をはじめとした社会構造の変化に伴い、文部科学省が取り組む「高大接続改革」。改革では、第一に知識・技能、第二に思考力、判断力、表現力、第三に主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を掲げた“学力の3要素”に関する育成・評価の重要性を打ち出しています。
 その核となる「大学入学共通テスト」の導入が2021年度入試に迫る中、2017年11月に試行調査(プレテスト)が行われました。試行調査の中で特徴的だった点は、図や写真、グラフなど複数の情報源から必要な情報を取捨選択して思考した上で解答を導き出す問題です。例えば国語の記述式問題においては、従来のセンター試験の現代文では定番だった評論や小説という枠にとらわれず、生徒会活動に関する会話文や文書などを掲載し、多角的な情報を組み合わせながら判断していくという設問がありました。
 試行調査同様、2018年度のセンター試験においても「高大接続改革」を視野に入れた出題傾向になっています。国語では、設問の中に生徒同士の対話文を掲載するという新しい形式の出題が見られました。他にも地理Bで出題された、人気アニメとその舞台と考えられる国の言語を紐付ける問題、「ゆるキャラ」をテーマにした会話文を掲載した日本史の問題など、取り扱う題材が目を引く設問もありました。これらは教科書では取り上げられないものです。つまり、単に知識を求めるのではなく、学んできた知識を基にした思考力、判断力、情報の活用力などを問うことを意図した出題でした。
 国公立大学の個別試験においても、主要科目以外に小論文や面接を新たに導入するなど、“学力の3要素”を意識した入試方法を採用する大学が増加。2019年度の入試においても、同様の方向性は強まっていくと考えられます。

定員管理の厳格化により私大合格者が前年比96%に

 大学志願者数に目を向けると、首都圏、近畿圏など都市部では増加傾向、地方ではやや減少傾向という地域色はあるものの、ほぼ前年並みに推移しています。18歳人口が減少期に突入する中、全体的な志願者数に大きな変動が見られなかったのは、近年の倍率激化による既卒生の増加が要因です。
 私立大学の志願者数と、倍率(志願者数÷合格者数)の推移を対比すると、2014・15年度は志願者数が増加したものの合格者数も増えたことから、倍率は前年より低い数値になりました。一方で2016・17年度は志願者数が増加した上に合格者数が絞り込まれたことで、15年度の3.2倍から3.3倍、3.6倍と倍率が上昇。18年度もその傾向は続き、最終値として4倍を超えると見込んでいます。
 背景にあるのは、大学の“定員管理適正化”です。国の入学定員超過是正に関する施策は大きく二つ。一つは私立大学等経営費補助金の不交付に関するルールです。不交付の基準となる入学定員超過率の数値が、定員規模に応じて18年度まで段階的に引き下げられました。さらに19年度からは、入学定員超過率が1.0倍を超える場合、超過入学者数に応じた学生経費相当額の減額措置が導入されます。
 二つ目は公立・私立大学などを対象とした、学部等設置認可の基準厳格化に関する施策。例えば収容定員4,000人以上の大学が300人以上の規模の学部を設置する場合、かつては1.30倍未満だった平均入学定員超過率の基準が、19年度には1.05倍未満まで引き下げられます。
 このような定員管理に関する施策を受け、多くの大学では合格者数の抑制傾向が強まり、この春の私立大学全体の合格者数が前年比で96%まで絞られるという結果を生んだと考えられます。

定員超過是正に対する私立大学の対策はひと段落

 定員管理に関する施策を受け、中部地方でも主要な私立大学を中心に合格者数を減らす動きが続き、倍率が右肩上がりになっています。大学によっては、昨年度から合格者数を2割以上絞り込んだところもありました。東海エリア全体としての合格者数は前年比96%。最近3年の倍率は2.7、3.0、3.3と激化の一途をたどっています。
 ただし、定員超過是正に対する各大学の対策は、2018年度入試でひと段落した大学も多いようです。ここ2年、私立大学では急激な難化がみられましたが、今後は18歳人口も減少していくことから、徐々に落ち着いた入試になっていくのではないでしょうか。

根強い私立大学人気と“文高理低”傾向

 志望動向としては、近年の私立大学人気、文系志向は継続しています。センター試験の受験科目の統計においてもその傾向は鮮明で、私大型と見られる3科目以下の受験者が増加、文系生の多くが選択する理科①の受験者が前年比104%と増えています。
 文系志向の要因としては、現行課程への移行がスタートした2015年度入試以降、理系科目の負担感が強くなった影響が、現在も継続していると考えられます。あわせて景気の回復兆候が重なったことなどを受け、国公立大学から私立大学へという動きも目立っています。今後、社会情勢や就職環境など抜本的な変化がない限り、文高理低、文系人気の流れはしばらく続くと予測されます。
 また、このエリアの受験生の志望動向としては地元志向が継続しています。中部地方の私立大学においては近年、実学系の強化など学部・学科編成が多様化したことや、都市部へのキャンパス移転による通学圏の拡大などを背景に、選択肢の幅が拡大。他エリアからの注目度が高まると同時に、中部地方出身者の地元大学志向は今後も続くと見られます。

グラフ ©Kawaijuku Educational Institution.
自ら考え、行動することで求められる力を身に付ける

 2019年度以降も「高大接続改革」の流れを受け、各大学では“学力の3要素”に挙げられる思考力や判断力、表現力、主体性などを問う入試方式や、英語の4技能を評価する入試方式がより拡充していくことが考えられます。例えば国公立大学では、英語の外部試験に関する新規利用拡大がより明確になるでしょう。それに伴い、各私立大学でも英語の外部試験を活用した新規の入試方式や実施学部が増える見通しです。多面的評価を視野に入れた総合問題や小論文、面接、プレゼンテーション、集団討議の実施、志望理由書の提出必須化などに関しても、国公立大学が先導する形で、2019年度はさらなる広がりが見込まれています。
 また、より具体的に試験対策を講じる際、参考になるのがアドミッション・ポリシーです。大学のホームページなどでは、各大学・各学部が求める学生像、必要と考える能力や適性、その方針に沿ってどのような入学者選抜試験を行うかなどを開示していますので、自身が学びたい内容と合致しているか、合格に向けて強化するべき力などを分析する際に役立ちます。
 多様化する入試の対策に頭を抱える受験生も多いと思いますが、重要なことは学んだこと、体験したことに対してどのように思考するかという点です。特別な経験ではなくても、授業の内容や部活動、学校の課外活動、学園祭、行事、ニュースなど日々の活動を通じて自ら考え、行動に移すということを常に念頭に置くことで、大学が求める力、ひいては今後の社会で必要とされる能力がおのずと身に付いてくるはずです。

夏休みを有効に活用し、情報収集、志望校選択を
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多くの受験生や保護者が訪れ、熱気に包まれた「2019 中部の私立大学・短期大学 大学展」

 2019年度は、今年度に比べてセンター試験の日程が遅くなる分、センター試験から私立大学の一般入試や国公立大学の前期日程試験までの期間が短くなります。年が明けてから慌てることのないよう、夏休みを有効活用して志望校や受験科目の検討を行い、秋以降の勉強の道筋を立てるなど、計画性を持って入試に挑みましょう。
 また、高校1・2年生にとって今夏は、じっくりと情報収集できる貴重な期間。オープンキャンパスなどを利用し、高校と大学の学びの違いを肌で感じるなど、目的意識を高めてください。
 入試環境として今後、注目が集まるのは2020年度以降の動向です。翌年から導入される「大学入学共通テスト」を前に超安定志向の受験になると予測されています。さらに2021年度から24年度にかけては、18歳人口の減少率がひと際高くなるので、各大学が独自の施策を打ち出すなど新たな動きが見られる可能性もあります。
 ただ、入試制度の変革や目先の倍率などに惑わされ、安易な思考で志望校選択をしないでください。まずは、しっかりと将来を見据えた上で目標を掲げることが最優先です。目指す進路に向かって最後まで努力し続け、意欲を持って入試にチャレンジしていただきたいと思います。

<企画・制作> 中日新聞広告局 <協力> 学校法人 河合塾