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主体性評価とは−2 入試活用 期待と不安 JeP運用開始

 高校生がインターネット上に日々の活動の成果をためていくeポートフォリオ(学びの記録)。中でも主体性の評価に生かせるよう入力項目を特化した「JAPAN e-Portfolio(JeP)」の運用が、昨年始まった。大学へ記録を提出できる機能もあるため、入試への活用を期待する声があるが、費用や負担などが見通せないとして導入に二の足を踏む学校もある。 (芦原千晶、大沢悠)

18年度 100超の大学が受理、参考・統計に

タブレットを使い、JePに文化祭などの振り返りを入力するJeP委員=東京都町田市の都立町田高で

タブレットを使い、JePに文化祭などの振り返りを入力するJeP委員=東京都町田市の都立町田高で

 昨年11月下旬の昼休み、東京都立町田高の一室に1年生32人が集まった。彼らは「JeP委員」。同級生にJePの入力を促し、使い方を教える役を担う。

 JePに記入できるのは「部活動」「学校行事」など8分野。例えば「球技大会の開催」だと、内容や年月、実行委員長の役割から、「準備に時間がかかった。次年度に引き継ぎたい」などの振り返りまで詳細に入力。賞状のコピーや作品の画像なども添付できる。

 記録は、必要に応じて受験生が大学への出願時にネットで提出できる。JePは連携する民間の複数のeポートフォリオからデータを取ることができるので、町田高はより自由に入力できる民間サービスも併用している。この日は委員自らが課外活動や文化祭を振り返り、タブレットで入力。「項目が多すぎる。紙に書くよりは楽だけど」と委員の小寺柚希さん(16)。武田和大さん(16)は「入試で全員を統一して見ようとするとこんな形式になるのでは」。

 2020年度の大学入試改革で、国は主体性を評価するよう求めている。その方法を調査研究する国の委託事業として関西学院大を中心に9大学がJePを開発、運用。全国の高校に説明資料を送り、講演会などで紹介するうちに導入する高校が増えた。今は全高一生の1割ほどにあたる約10万人が利用。町田高も積極的に活用する。

 「JePは大学に出す公的な資料。答案と心得よと生徒に話している」と牛来峯聡校長(60)。同時に「生徒はJePなどで日々振り返り、目標を立てるなどの繰り返しで成長できる。その教育的な指導こそ大切。入試に必要という理由だけで使いたくない」。

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 JePの記録を受け取る側の大学は国私立の11校が18年度実施の入試で試験的に活用する。100以上の大学が参考、統計資料などとして受験生に提出させる。

 中部地方でも皇学館大はAOや推薦入試の一部で初めて受験生に出してもらった。合否には使わず、主に資格やスポーツ実績の確認に使用。受験生の1割、約60人のデータをJePシステム=図=に要求し受け取った。添付資料もあり多い人はA4 100枚超。印刷や整理に労力がかかったといい「受験生の面接時の材料にもなるし、高校と大学の学びを接続させるのにも使えると思うが、大勢の受験生に対応するには工夫が必要」と田浦雅徳学長補佐。

 南山大は推薦入試の一部で、JePのデータを任意で提出させた。やはり合否には無関係。どんな情報が得られるのか統計データとして見るという。

 導入を見送る学校も多い。信州大は20年度実施の入試で使わない。「利用者がまだ少なく高校側の扱いも不明確。ただ翌年度以降は未定」と担当者。

 システムは民間業者が委託を受けて運営し、データを全て暗号化して出願時も安全に大学側に提供するというが、「情報が漏れないか不安」との声も高校側から上がる。また、委託事業は18年度で終わるため「今は無料のシステム使用料が、今後は発生するかもしれない」と語る大学関係者もいる。文部科学省の担当者は「19年度以降も続くかどうかは未定」とする。

調査書重視、電子化の動きも

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 そもそも大学は、受験生の学習の成果や部活動の実績などを高校がまとめた調査書を出願時に提出させている。国は入試改革で調査書を主体性の評価に生かせるよう、高校側に従来定めていたA4 2枚の制限を撤廃し、より具体的に記録することを求める。

 文科省の担当者は「あくまで調査書が証拠。JePなどで受験生が活動を書きため、これを参考に先生が調査書を作成する流れは良いと思う」。主体性の評価はAOや推薦入試だけでなく一般入試にも及ぶが、JePの開発に携わった関学大アドミッションオフィサーの尾木義久さん(53)は「調査書では活動の成果しか書けないが、JePでは具体的なプロセスが見え、証拠資料も添付でき、調査書の内容を補完できる。じっくり受験生を選ぶ時に有効」と話した。

 19年度予算で、同省が次の委託事業として要求しているのは調査書を電子化する調査研究だ。一般入試の受験生数が万単位になる大学もあり、紙資料は活用しづらいからという。

 愛知県公立高校長会の竹下裕隆会長は「JePの具体的な活用方針が国から示されず、大学も入試にどう使うか分からず、紙のポートフォリオで記録を残して備えつつ様子見している状況。調査書を一般入試にどう使うのかも不明で不安。教員の負担増となる懸念もある。国も大学も慎重に検討してほしい」と訴えた。

 次回は、主体性を評価する大学入試の現場に迫る。

(2019年1月13日)