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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2024.08.20

悪性リンパ腫 費用抑え創薬 名大 国産化目指し治験へ

 名古屋大が、最新のがん免疫治療法「CAR-T(カーティー)細胞療法」を活用した国産の治療薬を開発し、血液がんの一種「悪性リンパ腫」の患者を対象に、8月から治験の募集を始めた。従来より製造コストを削減したことが特徴で、保険治療での適用が認められれば、医療費抑制につながることが期待される。

 カーティー細胞療法は、患者の免疫細胞「T細胞」の遺伝子を改変して、がんへの攻撃力を高めて体内に戻す治療法。承認済みの海外製の治療薬は、日本で採取した患者の細胞を海外の施設に運んで製造し、1回の投与で3千万円以上かかる。名大の治療薬は遺伝子を組み込む際、安全性の確保が難しいウイルスではなく、酵素を使うことでコストを下げる。

 名大が技術支援し、タイで製造した治療薬は、2020年から同国の悪性リンパ腫患者5人に投与された。全員に効果が認められており、がん細胞が検出されない「寛解」に至った人もいる。今後、日本国内の治験で安全性と有効性を確かめ、早ければ28年の薬事承認を目指す。治験は名大病院、国立がん研究センター東病院(千葉県)、京都大病院など5病院で行い、名大病院には患者から既に問い合わせも来ている。

 名大大学院医学系研究科の高橋義行教授(小児科)は「既存薬の2分の1~3分の1の価格を目指す」と話す。海外製は対象年齢が18歳以上だったが、今回開発した治療薬は12歳以上に引き下げ、「これまで治療法がなかった若年層での投与が可能になる」と期待する。

 薬の製造は、皮膚などの再生医療製品を手掛けるジャパン・ティッシュエンジニアリング(愛知県蒲郡市)が担う。同社の村井博昭執行役員は「細胞の培養技術や知見を生かして実用化を支えたい」と述べた。(平井良信)

(2024年8月20日 中日新聞朝刊1面より)

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