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2009年6月23日

“カラー”の人生 歩み始め

性同一性障害で『女性』に 優希さん

女性としての人生が「楽しい」と話す優希さん=名古屋市内で

 心と身体の性の不一致が引き起こす「性同一性障害」。マスコミに取り上げられたり、法律が整備されたりと、着実に理解は進んでいる。一方で、偏見から家族や周囲に打ち明けられず苦しむ人も多い。多様な性を認め合うためにどうしたらいいのか。「女性」として歩み始めた優希(ゆき)さん(39)の人生に、学生スタッフが迫った。

 優希さんが、違和感を覚えたのは中学生のころ。「女になりたいというか、女性の格好がしたい気持ちがすごくあった」。高校生のころには、家族が家を空けた時、こっそり姉の服を着て楽しんだ。一方で、こんな行動に走る自分を「変態だ」と責めた。罪悪感がいつも心にあり、人に知られたら「生きていけない」と思っていた。

 「一般の人には理解されにくいんだけど、恋愛対象は昔から女性だったの」。女性が対象だったため周囲には“普通”と映った。「好きだった」女性と29歳で、結婚し、3人の子をもうけた。

 子どもの存在が母性に拍車をかけたという。「遊びに連れて行く時にお弁当を作るのがすごくうれしくって」。でも世間的には「父親」というギャップ。「父親らしさを求められ、つらくなってきた」

 2004年、戸籍の性別変更などを認めた性同一性障害特例法が施行。興味本位ではなく、新聞などで、まじめに取り上げられることが多くなり「隠す必要なんてない」と考えるようになった。

 とはいえ、それまで自分の“心の性別”が女性だとはよく分かっていなかった。1年半ほど前、専門クリニックを訪れたことが人生の転機になった。

 診断は「性同一性障害」。心の性別が女性だったことを初めて受け入れることができた。「『そうだったの! 自分は女だったんだ!』と思ったらすごく楽になった」

 痛みもあった。話し合いの末、パートナーとの9年間の結婚生活に終止符を打った。「子どもと離れることはつらかった…」。でも、彼女が障害を理解し、応援してくれたことが心強かった。

 実母には姉から伝えてもらった。母は「今まで娘らしいことは何一つしてあげられなかった」と言って、自分のアクセサリーを贈ってくれた。母の思いやりがうれしかった。

 昨年6月、戸籍の名前を男性名から「優希」という女性名に変えた。性別の変更は法律で未成年の子どもがいる場合はできないが、「女性」として生きていくことの決意だった。

 今、化粧をして、スカート姿で出勤する。同僚も最初は驚いていたが、今は受け入れてくれている。買い物に行ってもこれまでは、着たい服が着られなかった。「今は『これ買っていいんだ!』って」。朝起きて、着ていく服を選んで、メークして…。こんな女性としての日常が無性に楽しい。「生きるってこういうことなんだって。モノクロがカラーの世界になった感じ」

 しかし、社会にはまだ偏見もある。「いろんな生き方が認められることが大事って思う。私も自分にしかできないメッセージを発信していきたい」

偏見無くし苦しみから解放 名古屋で街頭活動

街頭で多様な性への理解を呼びかけるメンバーら=名古屋市中区栄で

 多様な性にイエス!?。名古屋中心部で5月17日、同性愛や性同一性障害ら性的少数者(セクシュアル・マイノリティー)とその支援者グループが多様な性への理解を訴えたイベントを、学生スタッフが取材した。

 この日は、1990年に世界保健機関(WHO)が同性愛を国際疾病分類の人格・行動障害から外したのを記念した「国際反ホモフォビア(同性愛嫌悪)デー」で、各地でイベントが開かれた。

 名古屋で活動を行ったのは、大学生や会社員らでつくるグループ。自らも同性愛者という代表の大学院生フレイザー真実さん(23)が中心となって活動を始めた。

 メンバーらは街頭で、全国から集まった性同一性障害や同性愛者らのメッセージを読み上げた。

 フレイザーさんは「自分の親に告白できないで苦しんでいる人も多い。偏見をなくすためには、誰かが声を上げなければならない」と力を込めた。他のメンバーは「存在を知ってもらうことが大事。セクシュアル・マイノリティーの人らの励ましになったと思う」と話した。

市民の反応
肯定と戸惑い 意見に世代差

 街頭活動の前を通る市民に反応を聞いた。

 若い世代はテレビ番組などで、触れる機会も多い。「自分がいいならいいのでは」(男子大学生)「偏見はない」(20代主婦)「恋愛に性別はない」(20代女性会社員)などと肯定的な意見が多かった。「相談に乗って応援してあげる」という会社員女性(28)もいた。

 戸惑いの声も。「私たちの世代はやはり否定的。こういう活動が街中で行われていることに驚いた」と会社員男性(56)。自分の子どもだったらとの問いには「時代の流れだから頭ごなしに駄目とは言わないけど…」。40代主婦も「自分の子どもだったらショック。受け入れる努力はする」と話した。

取材を終えて
愛知淑徳大2年 高倉 唯

愛知淑徳大2年 高倉 唯

 性同一性障害の人たちはすごく苦しんでいるのだと勝手に思い込んでいたけれど、優希さんは「本当の人生を生きている」と幸せそうに話してくれました。前向きで、周りの人を気遣う方。そのようなしんのある強さが印象的でした。

 記事にはできませんでしたが、名古屋市内であった同性愛者の結婚式も取材しました。男性カップルは「普段は自分たちが祝福されることはめったにないけど、今日は知らない人からも『おめでとう!』と言ってもらえて、すごくうれしかった」ととっても幸せそうに話してくれました。

 取材を通じて、世の中には本当にさまざまな性の形があることにあらためて気付きました。人が人らしく自由にのびのびと恋や性を楽しめる社会になることを願っています。

 高倉唯=取材班キャップ、岡本美紀、鈴木まり子(名古屋大)大崎湖水(愛知教育大)貝沼明華、林布由希(中京大)加藤奈々美(名古屋外国語大)田中文音(名古屋芸術大)野口仁実(名古屋学芸大)

(写真上)女性としての人生が「楽しい」と話す優希さん=名古屋市内で
(写真中)街頭で多様な性への理解を呼びかけるメンバーら=名古屋市中区栄で
(写真下)愛知淑徳大2年 高倉 唯

編集部|2009年6月23日 11:41 am


コメント

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  1. 偏見とは怖ろしいことですね。
    それがわかってても何かに私の考えも偏っているかもしれません。

    また「性」を意識的に認識する機会は稀有だと思います。

    「雄雄しい」や「女々しい」とはなにを基準にいっているのか、
    またなにを強いているのかこの記事を読んで悩みました。

    雨の中の街頭活動、取材班の皆さんの熱意と努力に感嘆します。

    投稿者:チューニー 2009年06月26日 19:14:52

  2. 記事を読んですごく勇気をもらいました。私も一度は男性と結婚をし、子供を授かりましたが。。どうしても男性との性の営みに抵抗を感じてしまい、とても苦しかったです。男性が嫌いではないのですが、どうしても抵抗があり、いつも自分は無理をして生きていきました。周囲からは、なぜ彼氏をつくらないのか?不思議におもわれたり、自分でもよくわからなくて。。。ただなんとなく、女の子が好きで、自分の居場所がいつもないそんな感覚と孤独でした。でも今は胸を張って 私は 女の子がすきだし、将来は女性のパートナーがいたらその子と価値観を深めたり、尊重し、人生をエンジョイできたらって思います。

    投稿者:Lilian 2009年07月5日 1:06:53

  3. >世の中には本当にさまざまな性の形があることにあらためて気付きました。

    上記に挙げられた以外のセクシャルマイノリティも、そこで起こる問題もあるので、他の一例も書いてみたいと思います。

    心と身体の性の不一致が引き起こす「性同一性障害」は、「身体男・心女(MTF)」「身体女・心男(FTM)」だけではありません。自分が「男でも女でもない、男でも女でもある、どちらでもない」という違和感を覚える「無性・両性・中性」が性自認のXジェンダーというタイプの性不一致の人もいます。また生まれつき両方の性別を身体に抱えたIS(インターセックス)と呼ばれる方もいます。同性愛・両性愛だけでなく、恋愛感情自体が持てない(あるいは身体の関係を持つのを嫌がる)Aセクシャルという立場の方もいます。いづれも自分の性の座標軸が判らず不安や混乱を覚たり、または性の固定概念・偏見から誰にも打ち明けられず悩んでいたり、時に攻撃を受けていたりする点では、現在、世間に知られてる性同一性障害や同性・両性愛者と立場は似ています。

    特にISは、その存在は意図的に世間から隠蔽され、最初からそういった性別は「なかったもの」として、当事者にも知らされず手術で身体を変えられたり、不安定な身体の不調に悩まされてる方も少なくないようです。しかしISの場合は興味本位で医者に身体を見られる事を嫌がって病気になっても病院に行きにくい、ISに適性のある医者がいる病院がどこにあるか判らないという方もいます。「Xジェンダー」の場合は現在認知されつつある性同一性障害よりも更に認知度が低いため、説明するのも理解されるのも困難で、当事者でさえどれが本当の自分か判らず混乱してる事も多いことから、上手く悩みを相談しにくくなっています。Aセクシャルは「恋人はつくらないのか、結婚はしないのか、肉体関係を何故持たないのか」等という質問を受けて、精神的な負担を感じる事もあるようです。

    また「男女どちらの性が恋愛対象になるのか」と、「自分の心がどの性に属しているかを認識する=性自認」とは、別物なのですが(優希さんの場合もこの例に当たると思われます)これも世間から非常に誤解されやすい点です。しかしセクシャルマイノリティ同士でも、自分と違うタイプを卑下・排除しようとしたり優劣を決めようとする姿勢が、ごく一部にみられるのは残念なことです。

    私はXジェンダーですが、小さい頃から、親にも周囲からも「男女」と否定され、時に親に躾と称した罵倒や暴力を受けて育ってきたので「本当の自分を出すと周囲に殺される」という対人恐怖症から、社会生活のコミュニケーションがうまくいかず非常に苦労しました。大人になってからは容体も悪くなり、カウセリングに行ったところPTSDと診断されました。あくまで私個人の例ですが、セクシャルマイノリティから二次的に生じた、こうした人権被害の問題もあると思います。今の私は多少のPTSD症状は残ってるものの気持はふっきれて、周りとも気楽にやっています。

    投稿者:匿名希望 2009年07月14日 14:52:26