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2016年3月29日

調理の手際 実習に効果 豊田工大 寮生活で夕食作り

「段取りや創造性学べる」

ギョーザのあんをこねる坂爪亮さんとロールキャベツのソースを作る小林知弘さん(左)=名古屋市天白区の豊田工業大で

 料理上手は実験上手? 名古屋市天白区の豊田工業大は工学部のみの単科大で、理系の学生が集う。男子学生は寮生活で料理を学び、実習や研究の手際を良くすることに生かしている。新生活で1人暮らしを始める学生の皆さん、自炊から学べることも多いかも。 (藤原啓嗣)

 いずれも豊田工大大学院修士1年の小林知弘さん(23)と坂爪亮さん(24)が3月上旬、寮の監督責任者で教授の斎藤和也さん(54)に感謝の気持ちを込めて寮で得意料理を振る舞った。2人は学部1年から4年まで寮で生活し、寮で料理上手として知られた。

 小林さんはロールキャベツを作り、具にタケノコの水煮を加えて食感を良くした。坂爪さんはギョーザを調理。ニンニクを使わずにショウガを効かせた。一口食べた斎藤さんは「最高」と親指を立てた。

 小林さんは「調味料を加える順番の『さしすせそ』は、分子が大きな砂糖を最初に加えないと味がしみにくいことで説明できる。料理は化学に通じる」と話す。

 豊田工大は、学生に共同生活で仲間との連帯感を養ってもらおうと、開学した1981年から1年生の男子学生のみが全員、学内の寮に入ることを義務づけている。毎年100人ほどの学生は8人1組のグループ単位で生活する。

 重視しているのが夕食作りだ。当番の学生2人が人数分の夕食を授業や実習が終わった午後6時から8時までに用意する。

 入寮当時は、カレーや親子丼、豚キムチなど簡単な品で腕を磨き、デザートにレアチーズケーキを付けるなどレパートリーを増やす。調理する量が多いため、ボウルや皿が足りなくなることも。下ごしらえをしながら、洗い物をして手を休めることはない。

 現在は寮から出て生活する小林さんと坂爪さんは、調理を通して実験の段取りを学び、手際が良くなったと声をそろえる。坂爪さんは「実習でも2つの実験を並行して進めて、誰よりも終わるのが早かった。料理や片付けなど複数の作業を進めるのが生きた」と振り返る。

 斎藤さんは「当初は寮生活を通じて仲間と連携することの大切さを知ってもらうのが目的だったが、自炊を通じ、実験の段取りが良くなるということはうれしい副産物」と喜ぶ。

 愛知県一宮市の作家五藤隆介さん(35)=名古屋大工学部中退=は2015年、「理系の料理」を著した。料理にまつわる科学の話を分かりやすく解説している。タマネギを切ると涙が出る原因はタマネギの中の硫化アリル類が酵素と反応した結果、肉が焦げるのはメイラード反応という化学反応…。五藤さんは「料理を深く理解するには化学知識が役立つ」と話す。

 豊田工大は17年に新しい寮が完成する予定。調理する時間があればその分勉強した方が良いと、学内から「寮で学生が夕食を作るのをやめては」という声も上がった。だが夕食作りを通じて学生が研究の準備や計画の立て方が上達しているのは見逃せないため、今まで通り寮に調理場を複数設けることにした。

 斎藤さんは「おいしいと言われる喜びは、モノづくりの喜びと同じ。料理は創造性もコスト感覚も学べる最良の実習」と話している。

料理で異文化交流 早稲田大の国際学生寮

 豊田工大のように寮生活を通じて学びを提供しようと、各大学は特色ある学生寮を運営する。早稲田大の国際学生寮は学生が料理で各国の文化を学ぶ。

 早稲田大は2014年3月、日本人学生と留学生が刺激を受け合う場として「国際学生寮WISH(ウィッシュ)」を東京都中野区に開設した。鉄筋コンクリート11階建てで、定員872人。利用する学生の4割が韓国や中国、台湾の留学生だ。個室もあるがキッチンやリビングは共有。食事を一緒に食べて、海外の文化を理解してもらう狙いがある。

 学生寮に詳しいリクルート進学総研(東京)の小林浩所長(51)は「学食でイスラム教で許されたハラルフードを出す大学も増えた。食事など身近なものから海外の文化を吸収してほしい」と話している。

(写真上)ギョーザのあんをこねる坂爪亮さんとロールキャベツのソースを作る小林知弘さん(左)=名古屋市天白区の豊田工業大で

編集部|2016年3月29日 10:13 am