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2016年3月01日

名古屋学芸大栄養学科の学生 被災地和ます出張食堂

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市荻浜の仮設住宅で、名古屋学芸大(愛知県日進市)の学生が住民向けの無償の食堂を2年前から春休みと夏休みの間に開いている。独居の住民やお年寄りが多く、学生による栄養満点の食事が喜ばれている。 (藤原啓嗣)

寝袋持参 もらい湯で交流も

 夕方、プレハブ平屋の仮設住宅の一室に住民が次々にやって来た。「こんばんは」と玄関にかけたのれんをくぐり、食堂に入る顔は明るい。学生が席に案内し、エビチリとナムル、スープをお盆に載せて配膳した。味付けはどうかと気にする学生に、住民たちは「みんなで食事でき、最高だよ」と声を弾ませた。

 食堂は、管理栄養学部管理栄養学科の田村明教授(66)が震災後に荻浜を視察し、学生が大学で学んだことを生かしてボランティアができないかと始めた。衛生管理や献立作りを学ぶ同学科の学生が調理に励む。

 5回目の今回は、2月17日~3月9日に3年生計20人が参加する。6、7人ずつが交代で1週間滞在し、希望する住民の朝食と昼食、夕食を作る。

 学生は仮設住宅の四畳半二間の空き部屋一室を借りて食堂を開設。10人が座れるテーブルといすを置き、住民が気兼ねなく食事ができるようにしている。大学が食材費と学生の片道分交通費を出し、活動をする。

 献立はサケとホウレンソウの卵炒めや八宝菜など多彩だ。健康に関心を持ってもらおうとメニュー表にカロリーと塩分量を書く。

 荻浜はもともとカキ養殖が盛んな土地で50世帯が暮らしていた。津波で多数の家が流され、2人が亡くなった。多くの住民が仮設住宅に移住し、今も12世帯20人が暮らす。70代以上のお年寄りが多く、4人が一人暮らしだ。

 3月上旬まで朝晩の気温が氷点下になる日も多い。学生が用意した朝食のみそ汁で体を温め、カキの養殖の仕事に向かう住民もいる。

 住民の無職赤間敏博さん(53)は「一人暮らしだと手間のかかる料理をしない。若い子と話ができるのもうれしい」と喜ぶ。

 学生は食堂として借りている部屋で寝袋で寝泊まり。交流を深めるために、住民の部屋の風呂を借りて「もらい湯」をすることもある。

 宮城県漁業協同組合の伏見真司代表監事(64)は「津波にのまれて、隣の家の屋根にしがみついて助かった」と経験を学生に語った。区長の江刺みゆきさん(74)は「3年前に一緒に仮設住宅で暮らしていた夫が病気で78歳で亡くなった」と話してくれた。

 耳を傾けた坂井愛美さん(21)は「震災のことを聞くと気を悪くするかと思ったが、いろんなことを教えてくれた。きっと風化させたくないんだ」と話す。リーダーの五十住友香さん(21)は「津波ですべて失った人が、カキを差し入れてくれた。思いやりの大切さを学んだ」と振り返る。

「本場の味だ」名古屋めし人気

 仮設住宅の住民のためにこれまでに約150食を提供してきた名古屋学芸大の学生たち。住民は、どんなメニューが心に残ったのだろうか。記者が食堂に来た住民10人に複数回答で聞いたところ、名古屋めしが一番人気だった。

 1位は6票集めたみそカツ。赤みそベースのたれが自慢の一品。漁業阿部正克さん(72)は「初めて食べた。愛知の学生が作った本場の味」と感激する。

 2位は2票のみそ煮込みうどん。江刺さんは「体が温まる」と笑顔。3位は天むす、ひつまぶし、赤だしのみそ汁、エビチリが1票ずつで並んだ。伏見康子さん(71)は「みそ汁は具だくさんで、だしの香りがいい」と話す。

 江刺さんは「養殖したカキを運ぶなど力仕事をする人が多いから濃い味付けが好まれる。珍しさもあって名古屋めしが人気なのでは」と語った。

(写真上)食卓を囲み、名古屋学芸大の学生と談笑する仮設住宅の住民たち=いずれも宮城県石巻市荻浜で

(写真下)人気メニューの天むすを握った名古屋学芸大の学生たち

編集部|2016年3月01日 11:16 am