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2016年2月02日

授業同席、内容を文字に 聴覚障害の学生支援

ノートテイクをする川上真輝さん(左)と浅生清香さん(右)。中央が支援を受ける谷口奈津子さん=名古屋市中村区の同朋大で

 授業で先生が話す言葉をすらすら紙に書き取って、聴覚障害のある学生に見せる「ノートテイク」。中部地方の大学でも広まり、福祉を学ぶ学生が将来の仕事に役立つと積極的に関わっている。 (藤原啓嗣)

2人一組 記録と補佐役

 ノートテイクは内容が分かるだけでなく、先生の動きを見て教室の雰囲気を感じながら友人と一緒に授業を受けられるのが長所。近年は、パソコンで打った文字をモニターに示す「パソコンテイク」など、IT機器も活用されている。

 名古屋市中村区の同朋大は、障害学生支援室に登録した学生17人がノートテイクをする。授業のない空いた時間を使い、聴覚障害のある学生3人が授業を受けるのを助けている。昨年末、社会福祉学部の村上逸人講師(54)の授業で、同学部1年の谷口奈津子さん(19)が、ともに同学部4年の浅生清香さん(22)と川上真輝さん(22)のノートテイクを利用した。

 村上講師が介護計画の立て方を話すと、浅生さんはB5判の用紙に黒い水性ペンを走らせた。「看護やリハビリの力を借りてやっていく」と1行13字ほどで8行、大きめの読みやすい字で書いた。川上さんは浅生さんの方をちらちら見て、浅生さんが書き切れなかった内容をメモ。さらに教科書を開いて村上講師が読む部分を指し示した。

 同朋大では、2人一組の手書きが支援の中心。書き手の中心となる「主筆」は先生の言葉を追い、補助の学生は主筆が書き漏らした部分を補い、教科書のページ数や先生からの質問を伝える。主筆が5枚書いたら席はそのままで役割を交代。主筆の用紙は、90分1こまの授業で40~50枚使う。

 同支援室は技術を身に付ける講習も実施。学生は大きさをそろえた字を書けるように講習を受け、経験豊富な先輩と組んで1~2カ月間、実習する。レベルに応じて学内独自の認定証が与えられる。責任感を持ってもらうため、同朋大は1こま1230円のアルバイト代を出している。

 浅生さんと川上さんはテレビ番組を録画して練習した。先生の雑談や関西弁などの方言も記録し、教室で起きた音をまるごと字にしようと心がける。浅生さんは「最初は緊張で手が震えたが、今は耳としての役割に徹している」と話す。谷口さんは「みんなが笑うと、ノートテイクのおかげで先生が冗談を言ったんだなとわかる。精神保健福祉士の資格を取りたい私に欠かせない」と頼りにする。

 愛知県刈谷市の愛知教育大の学生は、パソコンとiPad(アイパッド)を用いたパソコンテイクを実施。学生団体「てくてく」が利用学生6人を支える。代表の特別支援学校教員養成課程4年の牧井直人さん(22)は「今後は利用者の要望を聞き、意見交換をしながら進めたい」と話す。

 聴覚障害のある学生がノートテイクの支援者を募るのは、同県美浜町の日本福祉大。入学すると障害学生のためのオリエンテーションが開かれ、学生がチラシを配るなどしてノートテイクの支援者を探す。

 社会福祉学部1年の河添みのりさん(19)はオリエンテーションで関心を持ち、週3こまの授業で手伝う。河添さんは「障害者支援の現場を学べる機会でもある。壁をなくすために、続けたい」と張り切っていた。

障害者差別解消法 4月施行 学内の体制充実検討を

 筑波技術大障害者高等教育研究支援センター(茨城県つくば市)に、聴覚に障害のある学生を支援する大学のネットワーク「PEPNet―Japan(ペップネットジャパン)」の事務局がある。

 ペップネットジャパンは全国の23大学が連携。年に数回、情報を交換する場を設けている。事務局によると、ノートテイクは1980年代、聴覚に障害のある学生を周囲の友人が助けようと始まった。2000年以降、耳の不自由な大学生らのために取り組む大学が増えた。

 今年4月、行政機関や民間事業者の障害者への差別を禁止する「障害者差別解消法」が施行される。障害学生支援室など専門の部署を設け、支援体制を充実させる大学が増える可能性がある。事務局員の中島亜紀子さん(37)は「今までノートテイクなどに取り組んだことのない大学も、本人から希望があれば支援を検討する必要がある」と話している。

(写真上)ノートテイクをする川上真輝さん(左)と浅生清香さん(右)。中央が支援を受ける谷口奈津子さん=名古屋市中村区の同朋大で

編集部|2016年2月02日 10:53 am