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名港水族館と三重大 全国初 シャチ繁殖挑む 野生 批判で入手困難 new

 名古屋港水族館(名古屋市港区)と三重大(津市)は今年、シャチの人工繁殖に向けた全国初の共同研究に乗り出す。和歌山県太地町の追い込み漁が国際的な批判を浴びるなど、野生個体の入手が難しくなり、国内の水族館からシャチが消える恐れが浮上する中、2020年までに基礎研究を重ね、中国の水族館との連携も視野に人工授精による繁殖の実現を目指す。(池内琢)

 希少種のシャチは世界で米国や日本、中国など8カ国で計60頭が飼育されるのみ。国内では名港水族館と鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)の計7頭。いずれも3親等内の親族で繁殖は難しい。

 三重大は16年12月、国内の大学で初めてシャチやイルカなどを研究する「鯨類研究センター」を設立。名港水族館の要請で今回、繁殖計画に参加する。

 センター長で三重大大学院生物資源学研究科の吉岡基教授(鯨類学)によると、名港水族館の3頭のうち、雄のアース(9歳)と雌のリン(5歳)に注目。シャチは10歳ごろから性成熟期に入るため、今後、血液検査でホルモンの変化を調べたり、リンの卵巣の発達を観察する。名港水族館は、三重大の専門家の助言を基にシャチの生殖行動を解明し、具体的な繁殖計画につなげる。

 新たな血統を得るため、名港水族館は15年夏に飼育技術で提携した中国・マカオ近郊の世界最大の水族館「珠海長隆海洋王国」(広東省)との協力も模索。海洋王国から凍結した雄の精子の提供を受け、名港水族館で人工授精に取り組むことも検討する。シャチの人工授精はこれまでに、米国の海洋テーマパーク「シーワールド」でしか成功していないという。

 日登(にっと)弘館長は「公立の水族館として、繁殖研究は展示と車の両輪。今の個体を大切に育てながら、知見を積み上げる」と狙いを話す。

■シャチ

 マイルカ科の鯨類で、北極や南極から赤道付近の海まで生息する。別名「サカマタ」。雄は体長6〜8メートル、雌は5〜6.5メートルほどになり、寿命は50〜90年とされる。母系家族で群れで暮らすことで知られ、国際取引はワシントン条約で厳しく制限されている。国内では学術目的以外の捕獲は禁止。

(2018年1月11日 中日新聞朝刊1面より)

[2018.01.11]

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